イエユウレイグモについて解説
イエユウレイグモ(学名:Pholcus phalangioides)は、クモ目ユウレイグモ科に属する、細長い脚と小さな体が特徴の家屋性のクモです。その名のとおり、日本では人家の中にひっそりと住み着き、静かに暮らしていることで知られています。国内外問わず、非常に広い範囲で見られる種で、都市部から田舎の民家まで、さまざまな室内環境に適応しています。
1. 特徴
- 体長:成体の体長はおよそ7~10mm程度。脚が非常に長く、全体では30mm以上になることも。
- 色彩:淡い黄褐色~灰色をしており、光に透けるような透明感のある体をしています。
- 体型:腹部は細長く楕円形で、頭胸部は小さくまとまっており、脚は非常に繊細でしなやかです。
2. 分布と生息地
- 分布:世界中に分布。日本では北海道から沖縄まで広く確認されています。
- 生息環境:民家の天井の隅、押し入れの中、物置、倉庫、廃屋、ビルの隙間など、乾燥していて静かな室内空間を好みます。
3. 生態と行動
- 網の構造:不規則で非常に細かいクモの巣(不規則網)を作ります。天井の隅などに薄く張られ、あまり目立ちません。
- 食性:小型の昆虫や他のクモ類などを捕食。ユウレイグモは、他のクモの巣に侵入して、そのクモを捕食してしまう「クモ食性」も示すことがあります。
- 防衛行動:刺激を受けると、体全体を小刻みに揺らして「震え動作(バイブレーション)」を行い、外敵の目を欺きます。これが「幽霊が揺れているように見える」という名前の由来にもなっています。
4. 繁殖と成長
- 卵の保護:メスは卵嚢を糸で作り、それを口元に抱えて持ち歩きながら保護します。卵嚢は乳白色で、粒状の卵が見えます。
- 成長段階:卵→幼体(数回脱皮)→成体へと成長します。幼体も成体と同様に細長い脚を持ち、網の中で暮らします。
5. 人間との関係
- 害虫駆除の助っ人:イエユウレイグモは、ゴキブリの小型個体やチョウバエ、蚊などの室内害虫を捕食することがあり、「見た目は怖いが実は役立つ存在」とも言われます。
- 無毒性:人間に対して攻撃性はなく、毒も弱いため、基本的に無害です。家庭内で見つけた場合はそのまま放置しても問題ありません。
6. その名の由来と誤解
「ユウレイグモ(幽霊蜘蛛)」という名前は、その姿の儚さと、震えるような動きに由来します。見た目が不気味という理由で嫌われがちですが、その繊細な体つきや行動はむしろ興味深く、観察のしがいがあるクモでもあります。
まとめ
イエユウレイグモは、日本の住環境に密接に関わる小さなクモです。その幽霊のような姿から名前こそ不気味ですが、実際には家の中で害虫を捕まえる“静かな守護者”とも言える存在です。あまり目立ちませんが、人間の生活のすぐそばで、今日も黙々と巣を張り続けています。
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