
【日本昆虫研究所】極小の吸汁昆虫・ベニキジラミの知られざる生態
ベニキジラミ(紅木虱)は、日本の自然界に生息する体長2mm程度の極小昆虫で、見た目はまるで赤い粉のようにも見える不思議な存在です。キジラミ類の仲間でありながら、その美しい紅色と特殊な生態で一部の昆虫ファンからは高い人気を誇ります。
ベニキジラミとは?
- 分類:カメムシ目 キジラミ科
- 学名:Diclidophlebia subocellata(分類は文献により異なる場合があります)
- 大きさ:約1.5?2.5mm
- 体色:全身が鮮やかな紅色?朱色を帯びる
- 分布:日本全国(特に本州中部以南で確認例多数)
- 活動時期:春?秋(温暖地では越冬も可能)
見た目と特徴
- 成虫は極小で翅を持ち、セミのミニチュアのような体形
- 全身がうっすら粉を吹いたような紅色で、肉眼では赤い点にしか見えないことも
- 幼虫(ニンフ)はより小さく、葉の裏などに密集していることが多い
- 翅をすり合わせてかすかな音を出すこともある(詳細不明)
生態と生活環
- 主に植物の汁(師管液)を吸って生きる吸汁性昆虫
- 幼虫・成虫ともに葉の裏や枝に寄生し、口吻で汁を吸う
- 吸汁によって植物に「すす病」の原因となる**甘露(排泄物)**を分泌
- 幼虫は密集してコロニーを形成し、粘着性の分泌物に守られていることが多い
- 一部の種は特定の樹種(例:ウツギ類やヤマボウシなど)に寄生性が強い
被害と人への影響
- ベニキジラミは観賞植物や果樹に寄生することもあり、農業害虫として注意されることもある
- 被害は汁を吸われることで葉が変形したり、すす病が発生したりすることがある
- ただし、基本的には被害の程度は軽度で、森林生態系の一部として機能している
天敵と防衛手段
- クモやカゲロウの幼虫、寄生バチなどが天敵
- 幼虫は甘露の分泌物とワックスで自身を覆うことで天敵からの攻撃を防ぐ
- 成虫も俊敏に飛び跳ねる動作をするため、捕まえるのは意外と難しい
魅力と観察のポイント
- 日当たりの良い林道や、山の中の低木でよく見られる
- 肉眼では難しいため、ルーペやマクロレンズで観察すると美しさが際立つ
- 赤い粉のような集団が葉の裏にいるのを見つけたら、それはベニキジラミかもしれません!
小さくても生態は奥深い
ベニキジラミはサイズこそ小さいですが、その生態や色彩、葉裏での密集生活、寄生行動など、驚くほど多くの生態的戦略を持っています。知られざる昆虫の世界に一歩踏み込むと、こんなに小さな虫にも、驚きの知恵と進化が詰まっているのです。
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