
【日本昆虫研究所】ウスキシャチホコの生態と特徴:美しく擬態する“薄黄のシャチホコ蛾”

**ウスキシャチホコ(薄黄鯱鉾)**は、木の葉にそっくりな外見と、繊細な色合いを持つシャチホコガ科の一種です。蛾とは思えないほど芸術的な模様と、木に溶け込むような擬態能力で知られています。この記事では、ウスキシャチホコの特徴、生態、観察ポイントについて詳しく解説します。
基本情報

- 和名:ウスキシャチホコ(薄黄鯱鉾)
- 学名:Pheosia tremula(※和名に該当する国内亜種は異なることも)
- 分類:チョウ目(鱗翅目)シャチホコガ科
- 前翅長:約25~35mm
- 分布:本州、四国、九州
- 出現時期:5月〜9月(年2回発生の地域もあり)
- 生息環境:雑木林、公園、庭木周辺などの樹木のある場所
ウスキシャチホコの特徴

● 翅の色と模様

- 名前の通り、翅は**淡い黄色(薄黄)**を基調としており、枯れた葉や木の皮に酷似。
- 前翅に黒褐色の筋模様や斑紋が入り、木の皮や枝の模様と見まがう擬態が可能。
- 後翅は淡褐色で地味だが、全体的に統一感がある。
● 幼虫の姿

- 幼虫は緑色〜褐色で、成長すると**大きなシャチホコ状(背中を反らせる独特の姿勢)**になります。
- 体に毛は少なく、滑らかな外見。
- ポプラやヤナギ、サクラなどの広葉樹を食草とする。
生態と行動
● 擬態と防御行動
- 成虫は昼間、木の幹や枝にとまっており、擬態によって鳥などの捕食者から身を守ります。
- 翅を閉じた姿は木の割れ目や枯葉と見分けがつかないほど巧妙。
● 飛翔と活動時間
- 基本的には夜行性で、日中はほとんど動かず、夜になると飛翔して活動を始めます。
- 光に強く誘引され、夜の灯火に集まる姿も確認されています。
● 年2回発生型の地域も

- 地域によっては春と夏の年2回発生することがあり、それぞれに現れる個体の色調が若干異なる場合もあります。
観察のポイント
- 雑木林の中や街路樹、庭木の幹に静止していることが多く、見つけるには注意深い観察が必要。
- 灯火採集で見つけやすく、蛾を集めるライトトラップにもよく飛来。
- 擬態の精度が高いため、写真撮影時には背景と比較することでその巧妙さが際立ちます。
名前の由来と意味
- 「シャチホコガ」とは、幼虫が背中を反らせた姿勢(鯱鉾に似る)に由来し、「ウスキ」は翅の淡い黄色の色調を表します。
- その名前通り、色合いとポーズの両面から“擬態の達人”として知られる蛾です。
類似種との違い
- 同属のクロシャチホコやミヤマシャチホコなどと混同されることがあります。
- ウスキシャチホコはより淡い色合いで、黄色味が強く、黒い筋模様が明瞭。
- 翅の模様や色調に注目して識別することが重要です。
人との関係

- 幼虫がポプラやサクラなどの街路樹・庭木を食害することもあるが、被害はごく小規模で目立たない。
- 観察・採集対象としての人気が高く、昆虫ファンからの注目度は高い。
まとめ
ウスキシャチホコは、その精巧な擬態と薄黄色の美しい翅が魅力の蛾です。人目につきにくい存在ですが、じっくり観察するとその芸術的な外見に驚かされます。夜の森で静かにたたずむ姿は、自然界の擬態美の傑作とも言えるでしょう。
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