
【日本昆虫研究所】ヒレルクチブトゾウムシとは?深山に棲む奇妙な口の甲虫の秘密に迫る!
ヒレルクチブトゾウムシは、日本の山地に棲む珍しいゾウムシの一種で、名前の通り「口(吻)」が太く発達し、独特な形状をしています。加えて、「ヒレル」とつく名前からはやや奇抜な印象も受けますが、実際の姿は非常に魅力的で、昆虫マニアの間では密かに人気を集める存在です。この記事では、ヒレルクチブトゾウムシの特徴、生態、観察ポイントなどを詳しく解説します。
基本情報

- 和名:ヒレルクチブトゾウムシ
- 学名:Pseudocneorhinus bifasciatus(※地方変異種や亜種の可能性あり)
- 分類:コウチュウ目(甲虫目)・ゾウムシ科
- 体長:約4~8mm
- 分布:本州中部以南の山地、特に森林地帯
- 出現時期:5月~8月頃
- 生息環境:雑木林、ブナ帯、湿った山地林など
名前の由来

- 「クチブト」は口吻(こうふん:ゾウムシの“鼻”に見える部分)が太くて短いことから。
- 「ヒレル」は漢字で書くと「鰭る」または「緋れる」とも解釈され、体色の変化や光沢のある鱗片を持つことに由来するとされます(諸説あり)。
- 総じて、「鰭(ひれ)のような装飾を持つ太い吻のゾウムシ」という意味合いの名前です。
外見と特徴

● 体色と光沢
- 灰褐色〜緑がかった体色に、微細な鱗片状の毛が全身を覆う。
- 特に湿った環境下ではやや緑青色の光沢を帯びる個体もおり、美しい。
● 頭部と口吻の形状
- ゾウムシ特有の前方に突き出た吻部(こうふん)が太く短く、先端に口がある。
- 額部分が広く、目が大きく張り出しているため、愛嬌のある顔つきをしている。
● 翅と脚
- 前翅(鞘翅)は硬く、細かい点刻がある。
- 後脚は太く、歩行に適した形状で、ジャンプや跳ねることはないがしっかりと植物にしがみつく。
生態と行動

● 食性
- 広葉樹の葉(ブナ、ミズナラ、カエデ類など)を食べる。
- 若葉を好み、葉の縁を円形に削るような食痕を残す。
● 行動と生活史
- 成虫は春~夏に活動し、日中は葉の裏や枝先に静止していることが多い。
- 危険を感じると、「死んだふり(擬死行動)」をして落下する。
- 幼虫は土中で生活し、植物の根を食べて成長する。
観察のポイント

- ブナ林やミズナラ林など標高の高い山地の林縁で見つけやすい。
- 日中は静止していることが多いが、葉をめくると裏に付いていることがある。
- 小型なので、よく目を凝らして探すことが大切。
- ※擬死行動で落下するため、下草を丁寧に探すと再発見できることがある。
類似種との見分け方
- 同じクチブトゾウムシ類の中には似た種が多いが、吻が特に太く、顔つきが丸みを帯びている点が目印。
- 体表の微細な鱗片の配列や、前翅の模様(模様がうっすら2本入ることもある)も手がかりになる。
生態系の中での役割
- 広葉樹の葉を食べる植食性昆虫として、森林の植物群落に影響を与える。
- 同時に、小型の捕食者(クモ、鳥類、寄生蜂など)の重要な餌資源にもなっている。
ヒレルクチブトゾウムシの魅力
- 一見地味な昆虫ですが、独特な体型とかわいらしい顔つきが観察者を惹きつけます。
- 擬死行動や光沢ある鱗片、太い口吻など、他の昆虫にはない特徴が満載。
- マクロ撮影との相性も良く、拡大するとその魅力がさらに際立つ種類です。
まとめ
ヒレルクチブトゾウムシは、日本の山林に静かに生息するユニークなゾウムシで、その太い吻や美しい鱗片は観察者の目を引きます。昆虫観察の醍醐味が詰まったこの種は、**山歩きや森林散策の中で偶然出会う“秘かな宝物”**のような存在です。ぜひ森林を歩きながらその姿を探してみてください。
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