
【日本昆虫研究所】ハゴロモヤドリガとは?ハゴロモに寄生する謎の蛾の驚きの生態を解説!
ハゴロモヤドリガ(羽衣寄蛾)は、日本に生息する寄生性の蛾の一種で、主にベッコウハゴロモや他のハゴロモ類の幼虫や成虫に寄生することで知られています。見た目はごく普通の小型の蛾ですが、その生態は非常にユニークで、「昆虫に寄生する蛾」という希少なライフスタイルを持つことで注目されています。
基本情報
- 和名:ハゴロモヤドリガ(羽衣寄蛾)
- 学名:Fulgoraecia exigua
- 分類:チョウ目(鱗翅目) ヤドリガ科(Epipyropidae)
- 体長:成虫で10mm前後
- 出現時期:夏?秋(地域差あり)
- 分布:本州、四国、九州など日本各地
外見の特徴

- 成虫は全体的に黒褐色?濃灰色で地味な印象を受ける蛾。
- 前翅にはうっすらと模様があるが目立たない。
- 翅を広げると10?15mmほどになる小型種。
- 成虫の触角は短く、細い糸状。
生態と寄生のしくみ

■ 寄生対象は「ハゴロモ類」
主に「ベッコウハゴロモ」などのカメムシ目ハゴロモ科の昆虫に外部寄生します。これが本種最大の特徴です。
■ 幼虫はハゴロモにしがみついて成長
ハゴロモヤドリガの幼虫は、孵化するとすぐにハゴロモの体に取り付き、体液を吸って成長します。これは「外部寄生」と呼ばれるタイプです。
■ 最終齢になると地面に落ちて蛹化
一定期間寄生生活を続けたあと、ハゴロモの体から離れ、**地表や落ち葉の下などに潜って蛹(さなぎ)**になります。そして夏?秋に羽化し、成虫となって飛び出します。
ハゴロモヤドリガのライフサイクル

- 産卵:成虫のメスがハゴロモの近くや卵塊の周辺に卵を産む
- 孵化:孵化した幼虫はすぐに宿主を探し、取り付く
- 寄生成長:ハゴロモに付着し、体液を吸って成長
- 離脱と蛹化:一定期間後、寄生を終え、地面に落ちて蛹化
- 羽化:夏?秋に成虫となり再び飛翔・繁殖する
他の昆虫との関係と影響

- ハゴロモヤドリガは明確な捕食性や駆除効果を持つわけではありませんが、ハゴロモの個体数に影響を与える可能性があります。
- ハゴロモ類の一部は農作物に害を与えることもあり、間接的に生物的防除(自然な制御)の一例として注目されることもあります。
観察のポイント
- ハゴロモヤドリガ自体は非常に地味な蛾のため、単体での発見は難しいですが、ハゴロモの体に付着している小さな寄生虫のようなものが見えたらそれが幼虫の可能性があります。
- 羽化した成虫は灯火にも飛来するため、夏の夜にライトトラップで見つかることがあります。
なぜ珍しいのか?

ハゴロモヤドリガのように、昆虫が他の昆虫に寄生するというケースは昆虫界では珍しく、とくにチョウ目で寄生性を持つ例は限られています。このユニークなライフスタイルは、進化の過程で特殊なニッチ(生態的地位)を獲得した好例といえるでしょう。
まとめ

ハゴロモヤドリガは一見すると地味な蛾ですが、その宿主寄生型の生態は非常にユニークで、自然界の多様性や進化の奥深さを教えてくれる存在です。ベッコウハゴロモなどのハゴロモ類を見かけたときには、ぜひその体に何か付いていないか、注意深く観察してみてください。
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