【日本昆虫研究所】セアカツノカメムシの生態と特徴｜赤い背と突き出た肩が印象的なカメムシの正体とは？
■ 概要
セアカツノカメムシは、日本各地の森林や里山で見られるやや大型のカメムシで、体の背面にある赤色の斑紋と、左右に張り出した角状の肩が特徴的な種です。堅牢な体と警戒心の強い性質から、昆虫愛好家の観察対象として人気があります。森林性の昆虫として、多くの広葉樹に依存して生活しています。
■ 基本情報
- 和名：セアカツノカメムシ（背赤角亀虫）
- 学名：Poecilocoris lewisi
- 分類：カメムシ目（半翅目） / ツノカメムシ科（Scutelleridae）
- 体長：約10〜14mm
- 分布：本州、四国、九州、沖縄など
- 活動時期：5月〜10月（地域によっては4月から活動）
- 生息環境：雑木林、林縁、庭木、公園、果樹園
■ 特徴
セアカツノカメムシの体は全体的に暗緑色または金属光沢を帯びた黒褐色で、背中の中央部に明瞭な赤い斑紋が入ります。名前の「背赤」はこの赤色に由来します。
前胸部の左右両肩部分がやや角状に突出しており、ここが「ツノカメムシ」と呼ばれる所以です。体型はやや幅広で、背面から見ると丸みを帯びた盾のような形状をしています。
また、体表面は硬く、外敵からの攻撃に強い構造となっており、脚はやや短くてがっしりとしています。
■ 生態
セアカツノカメムシは植物の汁を吸うカメムシで、特にサクラ、クヌギ、ウメ、カキ、ナシなどの広葉樹や果樹に集まり、若い葉や果実、枝から吸汁します。
夜行性ではなく昼間に活動が活発で、太陽の光を浴びて木の幹や葉の上にじっとしていることが多いです。特に夏から秋にかけて個体数が増え、集団で見られることもあります。
また、セアカツノカメムシは臭腺（しゅうせん）を持ち、外敵に襲われると強烈な臭いを発することで知られています。ただし、他のカメムシと比べると臭いはやや控えめです。
■ 観察ポイント
- 樹木の幹や葉、果実の表面にとまっていることが多い。
- 成虫は動きが鈍く、比較的観察しやすいが、接触すると落下したり飛んで逃げることもある。
- 体表の赤斑と肩の角張った形に注目すると識別しやすい。
- 成虫・幼虫ともに見られ、特に秋にかけて発生数が多くなる。
■ 類似種との違い
- ツノカメムシ類の中でも、赤斑を持つ種は少なく、背中の赤い紋様がセアカツノカメムシの決定的な特徴です。
- 同じツノカメムシ属のヒメツノカメムシやオオツノカメムシは赤い背紋を持たない、または模様が異なります。
- 光沢のある体と肩の突出部が他のカメムシと見分けるポイントになります。
■ 名前の由来
「セアカ」は背中の赤い模様、「ツノカメムシ」は前胸部両側の角状突起から名付けられています。「カメムシ」という名前の通り、背面が甲羅のように堅く、楯のような形をしていることも名称に関係しています。
■ まとめ
セアカツノカメムシは、美しい赤い背紋と力強い体つきが魅力的な森林性のカメムシです。独特の形状と模様を持つことから、カメムシ観察初心者にも見つけやすく、識別しやすい種といえます。秋の林縁や果樹園などで、この個性的な姿をぜひ探してみてください。
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