
【日本昆虫研究所】ハグルマチャタテの生態と特徴|歯車模様を背負う小さな書物の虫、その正体とは?
■ 概要

ハグルマチャタテは、チャタテムシ目の中でも特に美しい模様を持つ種として知られ、翅に広がる歯車状の模様が特徴的な小型昆虫です。名前の「ハグルマ(歯車)」はこの翅の模様に由来し、昆虫観察者の間では人気の高いチャタテムシのひとつです。森林の樹皮や倒木の表面などで観察され、動きは素早く、よく跳ねることがあります。
■ 基本情報

- 和名:ハグルマチャタテ(歯車茶立)
- 学名:Psococerastis gibbosa
- 分類:チャタテムシ目(Psocoptera) / チャタテムシ科(Psocidae)
- 体長:約3?4mm
- 分布:本州、四国、九州、沖縄(森林地帯を中心に広く分布)
- 活動時期:通年(特に春?秋に多い)
- 生息環境:落葉広葉樹の樹皮、倒木、朽木、コケの上、時に建物の外壁
■ 特徴
ハグルマチャタテは、体長3?4mmほどの非常に小さな昆虫で、翅に放射状の歯車のような模様を持つのが最大の特徴です。翅は半透明?淡褐色で、模様は濃褐色の線が同心円状または放射状に走る美しいパターンをしています。
体色は茶褐色?黒褐色で、樹皮や枯葉の上では非常に目立ちにくい保護色になっています。頭部はやや大きく、長くて繊細な触角を持ち、脚は細く跳ねる能力に優れています。
■ 生態

ハグルマチャタテは、樹皮や朽木の表面に発生したカビや藻類、微細な有機物を舐め取って食べる微生物食性の昆虫です。これにより、森林の微生物群集の制御や分解過程に関与していると考えられます。
単独か、数匹程度の小さな群れで生活することが多く、静かに動きながら地表を歩いたり、翅を軽く震わせて移動します。驚かされるとピョンと跳ねて逃げるため、観察には慎重さが必要です。
■ 観察ポイント

- 倒木や立ち枯れ木の表面、苔むした樹皮などに注意すると見つかります。
- 特に湿度の高い森林の木陰では観察しやすく、ルーペやマクロレンズを用いると翅の模様まで確認できます。
- 動きは素早いですが、じっとしている時間もあるため、根気よく探すのがコツです。
■ 類似種との違い

- 他のチャタテムシの仲間は模様が単調なものが多く、ハグルマチャタテの翅の放射状模様は際立って特徴的です。
- 大きさや体形は類似していても、模様で容易に見分けることができます。
- 家屋内に発生するチャタテムシ類(書籍害虫)とは異なり、ハグルマチャタテは屋外性の森林性種です。
■ まとめ

ハグルマチャタテは、小さな体ながらも精巧で美しい翅の模様を持つ昆虫で、森林の倒木や樹皮の上という限られた環境で見られます。動きもかわいらしく、マクロ撮影の対象としても人気があります。普段の散策ではなかなか気づかれない存在ですが、目を凝らせば、その魅力的な姿にきっと出会えるはずです。
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