【日本昆虫研究所】メキリグモの特徴と生態｜草地に生きる小さな網の職人の秘密に迫る
■ 概要
メキリグモは、日本の草原や林縁などに生息する小型のクモで、繊細な円網（えんもう）を張る習性を持つことで知られています。クモらしい姿と行動を持ちつつ、目立たない存在でありながら、生態系の中で重要な役割を担っています。特に草の茎間に張られる網は小さくても精巧で、自然の美しさを感じさせる構造をしています。
■ 基本情報
- 和名：メキリグモ（目切蜘蛛）
- 学名：Araneus 属の一種、または Neoscona 属に含まれることもある
- 分類：クモ目（Araneae） / コガネグモ科（Araneidae）
- 体長：雌 約6?10mm、雄 約5?7mm
- 分布：日本全国
- 活動時期：春?秋（特に初夏から晩夏）
- 生息環境：草原、林縁、畑、公園、道路脇の草むら
■ 特徴
メキリグモは全体的に黄褐色?灰褐色で、腹部に暗色の縦じま模様やまだら模様が見られます。特に腹部背面の模様は個体差があり、時にハート型や木の葉のような模様を形成することがあります。
脚は細長く、各脚に黒っぽい帯模様があることが多く、体の色とよく馴染んでおり、背景に溶け込むような保護色になっています。
■ 生態
夜行性で、日中は網の近くでじっとしているか、葉の陰や草の裏に隠れて過ごします。夕方になると活発に活動し、草の茎と茎の間に直径10?20cmほどの円網を張って獲物を待ち構えます。
主な餌はハエやガ、ユスリカなどの飛翔性の小型昆虫で、網にかかった獲物は素早く噛みついて麻痺させ、体液を吸収します。
交尾の時期になると、オスはメスの網に近づいて慎重に求愛を行います。交尾後にオスが捕食されることもありますが、必ずしもそうなるとは限りません。
■ 観察ポイント
- 日中は見つけにくいが、夕方?夜間に網を張っている姿が観察しやすい。
- 草むらを懐中電灯で照らすと、網の中央にメキリグモが静止していることがある。
- 網の位置は地上30?100cm程度の高さが多く、低めの草本層が好まれる傾向があります。
■ 類似種との違い
- コガネグモやナガコガネグモに比べると体が小さく、網も小型です。
- ヒメグモ類とは網の形状が異なり、メキリグモは左右対称の円網を張る点で判別が可能です。
- 体色や模様のバリエーションはあるものの、腹部に見られる縞模様が目印となります。
■ 名前の由来
「メキリグモ」という名前の由来ははっきりしていませんが、一説には「目切（めきり）」＝「目立たない」「際立たない」姿を意味するとも考えられます。また、「目を切るように素早く動く」様子から名付けられた可能性もあります。いずれにせよ、小さく控えめな外見と動きの速さが語源に関係しているようです。
■ まとめ
メキリグモは、身近な草地にひっそりと生きるクモでありながら、緻密で美しい網を張り、精巧な狩りの技術を駆使して生活しています。小さな体に隠されたこの高い生存技術は、私たちが自然に向ける視線をもう一段深くしてくれる存在です。目立たない存在ながら、確かな役割を果たすこのクモの姿を、ぜひフィールドで見つけてみてください。
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