
【日本昆虫研究所】アシナガグモの生態と特徴|長い脚で素早く獲物を捕らえる地上性の待ち伏せハンター
■ 概要

アシナガグモは、日本全国に生息する中型の徘徊性クモで、その名の通り長い脚を持ち、網を張らずに地面を歩きながら獲物を狩るスタイルで知られています。昆虫の動きを敏感に察知し、俊敏な動きで一瞬のうちに飛びかかって捕らえる様子は、まさにハンターそのもの。見た目は地味ながら、生態は非常にアクティブで興味深いクモの一種です。
■ 基本情報
- 和名:アシナガグモ(脚長蜘蛛)
- 学名:Oxyopes sertatus
- 分類:クモ目(Araneae) / アシナガグモ科(Oxyopidae)
- 体長:メス 約8?11mm、オス 約6?8mm
- 分布:日本全国(本州?南西諸島)
- 活動時期:4月?10月(地域によっては11月頃まで)
- 生息環境:草地、林縁、河川敷、公園、田畑、庭先などの植生のある場所
■ 特徴

アシナガグモは、体は細身でやや扁平、脚が非常に長く、特に第1・第2脚が前方に大きく突き出しているのが特徴です。体色は黄褐色?暗褐色で、腹部背面に縦筋模様があり、草むらや樹皮に紛れるような保護色となっています。
頭胸部(顔にあたる部分)は幅広く、目は8個が独特な配置で前方に集中しており、動くものに非常に敏感です。網を張らない徘徊性のクモの中でも視覚が発達しているグループに属します。
■ 生態

アシナガグモは、待ち伏せと徘徊を組み合わせた狩りのスタイルを持つクモで、草の上や茎、葉の裏などに静かに潜みながら、通りかかった小昆虫を素早く捕らえます。主な餌はアブラムシ、ハエ、ハチ、小型甲虫など。
網は張らず、強力な脚と高い視覚を頼りに狩りを行う点が最大の特徴です。また、捕らえた獲物には糸を巻きつけず、そのまま押さえつけて噛みつき、消化液を注入して体液を吸収します。
産卵期になると、メスは葉の裏などに卵のう(卵の包み)を産み付け、しばらく守る行動も見られます。
■ 観察ポイント
- 晴れた日の日中、草の先端や茎の途中などにじっとしている個体がよく見られます。
- 一見すると枯れ草に見えることもあるため、ゆっくり近づいて観察すると発見しやすくなります。
- 動きが非常に早いため、撮影には高速シャッターが有効です。
■ 類似種との違い
- ササグモ:同じく徘徊性のクモで似た生態を持つが、目の配置や体形がやや異なる。ササグモは腹部が丸みを帯びており、脚の刺がより目立つ。
- ハエトリグモ類:体がコンパクトで可愛らしいが、脚が短く動きも跳ねるよう。アシナガグモのような長い脚はない。
- 徘徊性のカニグモ類とは脚の開き方が違い、アシナガグモは真っすぐ前方に脚を構える姿勢が特徴的です。
■ まとめ
アシナガグモは、網を使わず自ら獲物を探して捕らえる地上性のハンターであり、俊敏な動きと長い脚、優れた視覚を活かした狩りのスタイルは、昆虫界でも異色の存在です。どこにでもいる身近なクモでありながら、その生態をよく観察してみると、自然界の中での洗練された捕食技術に驚かされることでしょう。草むらに足を踏み入れた際は、ぜひ静かに目を凝らして、アシナガグモの姿を探してみてください。
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