
【日本昆虫研究所】マルツノゼミの生態と特徴|奇妙な“ツノ”をもつ極小の不思議なセミ、その正体とは?
■ 概要

マルツノゼミは、セミと名がついていますが、私たちがよく知るアブラゼミやミンミンゼミとはまったく異なるグループに属する、非常に小型の昆虫です。独特の“丸い角”のような突起を背負ったような形状を持ち、まるで甲虫や奇妙な装飾品のような外見で注目されます。森の中の樹皮や枝先などでひっそりと暮らしており、昆虫愛好家の間では“出会えるとラッキーな昆虫”の一つとされています。
■ 基本情報
- 和名:マルツノゼミ(丸角蝉)
- 学名:Tricentrus fulgidus など(マルツノゼミ属 Tricentrus に分類)
- 分類:カメムシ目(半翅目) / ツノゼミ科(Membracidae)
- 体長:約5?8mm
- 分布:本州・四国・九州(暖地に多い)
- 活動時期:5月?9月(初夏?初秋)
- 生息環境:雑木林、里山、庭木、林道沿いの樹木の枝や幹
■ 特徴

マルツノゼミの体は全体的に小さく、背中に「兜(かぶと)」のような突起がついたユニークな外見をしています。この突起は丸みを帯びており、「丸い角」のように見えることから「マルツノゼミ」の名前が付けられました。
体色は黄褐色~黒褐色で、地味ですが樹皮に非常によくなじむ高い擬態性を持ちます。脚は短く、背面から見ると昆虫というより甲虫やコケの塊のようにも見えます。
翅(はね)は透明または半透明で、短くたたまれて体を覆うようになっており、静止しているととても目立ちにくい存在です。
■ 生態
マルツノゼミは、植物の導管液(木の汁)を吸う植物食性昆虫で、カメムシ目の仲間らしくストロー状の口器(口吻)を使って樹木に口を刺し、養分を吸います。
普段は木の枝や樹皮の上にじっと静止しており、天敵や人間が近づくと背中の突起や保護色で擬態して身を守ります。
飛翔能力はあるものの、あまり活発に飛び回ることはなく、ゆっくりと移動しながら生活します。鳴き声は出さず、セミという名前から想像されるような鳴き声や鳴き行動はありません。
■ 観察ポイント
- 森林や林道沿いのコナラ、クヌギ、カエデなどの落葉樹の枝先や幹をよく観察すると見つかることがあります。
- 木肌にそっくりの色合いと形状でじっとしているため、ルーペやマクロレンズでの観察が効果的です。
- 雨上がりや曇りの日、風が少ない環境で比較的目立ちやすくなります。
■ 類似種との違い
- ツノゼミ類(Leptocentrus, Centrotusなど):背中の突起が直線的・とがっている種が多いのに対し、マルツノゼミは背中の突起が丸みを帯びているのが特徴です。
- ヨコバイ類やアワフキムシ類と間違われることがありますが、背中の“兜”状突起の有無で識別可能。
- 他の昆虫に擬態しているとも言われ、特に鳥のフンやコケに見える保護色と形が識別のヒントになります。
■ まとめ

マルツノゼミは、その奇妙で愛嬌のある見た目と、目立たぬ生態が魅力のツノゼミ科の中でも人気の高い種です。身近な雑木林や庭の木でも観察できることがあり、自然観察の“お宝発見”のような存在です。昆虫の擬態や進化、形態の多様性を感じるうえで非常に興味深い昆虫であり、ぜひ一度は実際に見つけて観察してみたい種といえるでしょう。
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