アブラムシ上科カメムシ目

【日本昆虫研究所】セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシとは?黒く群れる外来植物専用アブラムシの驚きの生態

【日本昆虫研究所】セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシの生態と特徴|外来植物とともに拡がる、極小の黒いアブラムシの謎に迫る


■ 概要

セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシは、北アメリカ原産の外来植物「セイタカアワダチソウ」に寄生する非常に小型で黒いアブラムシの一種です。セイタカアワダチソウの群生地では大量発生することもあり、植物の養分を吸い取るだけでなく、アリやテントウムシなどとの相互関係も観察できるため、都市郊外の自然観察の対象としても興味深い昆虫です。


■ 基本情報

  • 和名:セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシ
  • 学名Uroleucon nigrotuberculatum
  • 分類:カメムシ目(半翅目) / アブラムシ科(Aphididae)
  • 体長:約2?3mm(有翅型・無翅型とも)
  • 分布:日本全国(セイタカアワダチソウの分布に準ずる)
  • 活動時期:春?秋(特に9月?11月にかけて多く見られる)
  • 生息環境:河川敷、空き地、道端、荒地などセイタカアワダチソウのある場所

■ 特徴

このアブラムシは、黒?黒褐色の体色で、脚や触角、管状の尾端(尾片)も黒いため、植物の茎や葉柄に付いているとまるでゴミのように見えることもあります。体は丸く、光沢があり、成虫でも2?3mm程度と非常に小型です。

有翅型と無翅型の両方が存在し、有翅型は羽を持って飛び移動することができますが、観察される多くは無翅型の個体群です。

また、名前のとおり“ヒゲナガ(触角が長い)”で、体長に比してやや長めの触角を持ちます。


■ 生態

セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシは、セイタカアワダチソウ(Solidago altissima)に特異的に寄生する単食性アブラムシで、群生するこの植物の花茎や蕾、茎の中腹部に多数群れて吸汁活動を行います。

体液を吸うときに甘露(糖分を含む排泄物)を排出するため、これを目的にアリが集まってくることも多く、**アリとの共生関係(ミルクを与えて守ってもらう)**が観察されます。

また、天敵であるテントウムシやヒラタアブの幼虫などが現れることもあり、アブラムシを中心とした小さな生態系が成立しています。

爆発的な増殖力を持ち、気温の高い秋には1本のセイタカアワダチソウに数百匹が群がる光景も見られます。


■ 観察ポイント

  • 秋口(9?11月)に、セイタカアワダチソウの茎や花の下部に黒く密集している小さな粒状のものを見つけたら、それがこのアブラムシです。
  • 河川敷や空き地の草むらなどで、セイタカアワダチソウが群生している場所が観察に最適。
  • 拡大鏡やマクロレンズを使用すると、アブラムシ同士の違いや有翅型の出現も確認できます。

■ 類似種との違い

  • ヨモギアブラムシムギクビレアブラムシなども黒っぽく見えるが、寄主植物が異なるため、寄生している植物を手がかりに識別できます。
  • セイタカアワダチソウにのみ集中的に発生し、密度が高いことが多いため、場所と植物の種類を確認するのが判別の近道。
  • 他のアブラムシと違って黒光りして見えることが多く、シルエットでも見分けられます。

■ まとめ

セイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシは、外来植物であるセイタカアワダチソウと密接に関係した存在で、小さな体に秘めた巧妙な繁殖力と社会性を備えています。特定の植物に依存する生活、天敵やアリとの関係、そして密集行動など、微小ながら奥深い生態を持つ本種は、都市近郊でも観察可能な貴重な昆虫です。秋の草地を訪れた際には、ぜひその足元の「黒い点々」に注目してみてください。



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