
##【日本昆虫研究所】ヨダンハエトリとは?|四段模様が特徴の個性派ジャンピングスパイダー

概要
ヨダンハエトリは、ハエトリグモ科に属する小型のクモで、和名はその背中に見られる4つの黒い縞模様に由来します。体長は4~6mmほどと非常に小型ながら、鋭い視力と優れた跳躍能力を持ち、昆虫を巧みに捕食する姿が観察されます。
クモでありながら網を張らず、代わりに優れた跳躍と視覚を武器にして獲物に接近し、瞬時に襲いかかる「アクティブハンター」として知られています。都市部の公園や庭先、雑木林の葉上などで目にすることができ、地味ながら独特の可愛らしさを持つクモです。
特徴

ヨダンハエトリは体全体が褐色から黒褐色で、背面に白っぽい帯状の模様が四段に入るのが最大の特徴です。雄の方が模様がくっきりしており、脚の一部が黒く太くなる傾向があります。
頭胸部(前半身)は大きな8つの目が並んでおり、特に前方の主眼は非常に発達しています。人間のような立体視が可能で、動く対象を正確に追尾する能力を持っています。この視覚は、ハエトリグモ類全般に共通する大きな特徴で、静止している虫よりも動いているものに敏感に反応します。
また、糸を用いて安全確保用の「ライフライン」を張りながらジャンプする習性があります。跳躍距離は自身の体長の数十倍に及び、獲物への襲撃や高所からの移動時に活用されます。
生態

ヨダンハエトリは日中に活動する昼行性のハンターで、クモの中では例外的に能動的に動き回る捕食者です。主に小型昆虫やその幼虫を狙い、視界に入るとじわじわと距離を詰め、一気に跳びかかって捕獲します。
網を張らないため、獲物を待つのではなく自ら狩りに出るスタイルです。狩りの際には、飛びかかる前に必ず腹部の先から糸を出し、ジャンプ後の安全策を講じるという高度な行動も観察されます。
繁殖期になると、雄は前脚を上げて揺らすような求愛ダンスを行い、雌にアピールします。交尾後、雌は葉の裏などに糸でつくった巣に卵を産み、一定期間保護します。
観察ポイント

- 活動時期:4月?10月頃にかけて日中活発に動く。気温が20?30度の晴れた日が最適。
- 出現環境:低木の葉の上、ベランダの手すり、公園の柵、植え込みの枝など視界の開けた場所。
- 動きに注目:周囲をきょろきょろ見渡すような首振り動作や、前脚を高く掲げて歩く様子は非常にユニーク。
ハエトリグモ類は人に対してもあまり警戒せず、カメラを向けるとこちらに反応して振り向くこともあり、クモの中では「愛嬌がある存在」として親しまれています。
類似種との違い

- アダンソンハエトリとの違い:アダンソンハエトリは黒く光沢のある体で、体色に4つの帯模様はない。都市部ではややよく見かける種。
- ネコハエトリとの違い:ネコハエトリはより太く短い体型で、毛深く見える。背面模様も異なる。
ヨダンハエトリは模様がはっきりしているため、じっくり観察すると識別は容易です。
まとめ
ヨダンハエトリは、見た目の地味さとは裏腹に、優れた視覚と跳躍力を持つ知的な狩人です。網を張らずに視覚を使って獲物を狙うスタイルは、クモの中でも極めてユニークで、動きを観察していると飽きることがありません。身近な場所で見つけることができることから、昆虫観察初心者にもおすすめの対象種です。
基本情報
- 和名:ヨダンハエトリ
- 分類:クモ目 / ハエトリグモ科
- 体長:4?6mm(雌の方がやや大きい)
- 分布:日本全国(本州以南が中心)
- 活動時期:4月?10月(昼行性)
- 生息環境:公園、庭、低木、フェンス、建物の壁面など
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