カメムシ目ワラジカイガラムシ科

【日本昆虫研究所】オオワラジカイガラムシの生態と観察|巨大なカイガラムシの実態とその影響


オオワラジカイガラムシとは?

オオワラジカイガラムシは、カメムシ目・カイガラムシ上科に属する昆虫で、名前の通り「大きなワラジ」のような形状をもつ特異な外見が特徴です。体長が10mmを超えることもあり、カイガラムシ類としては異例の大型種。日本では主に本州から九州にかけて分布しており、特に都市部の街路樹や庭木などで確認されることが多い昆虫です。


特徴

  • 体長:10~13mm前後(メス)
  • 体形:楕円形で扁平、全体にわたって白くワックスに覆われており、乾燥したワラジのような質感を持つ。
  • 体色:表面は白っぽいが、ワックスの下には褐色の体が隠れている。
  • 性差:メスは無翅でほとんど動かず、オスは小型・有翅で見かける機会は非常に少ない。

その姿は昆虫というよりコケや地衣類にも似ており、慣れていないと気づかれにくい存在です。


生態と行動

  • ライフサイクル:年に1回の発生で、春に卵を産み、夏〜秋に成虫が見られます。
  • 生活様式:メスはほぼ一生を同じ場所で過ごし、体の下に卵を抱えて静かに暮らします。
  • 繁殖方法:主に単為生殖で増えるとされ、繁殖力が非常に高い。
  • 分泌物:体から甘い蜜状の排泄物(甘露)を分泌し、アリとの共生関係を築くこともあります。

寄主植物と影響

  • 寄主植物:ケヤキ、エノキ、クヌギ、サクラ、モミジなどの落葉広葉樹を中心に、都市部の街路樹にも多く見られます。
  • 被害:植物の樹液を吸汁することで、葉や枝の生育に悪影響を与えるほか、排泄物の甘露によってすす病を引き起こし、葉が黒く汚れる原因にもなります。

街路樹の幹や枝にびっしりと付着する様子は見た目にもインパクトがあり、害虫として駆除対象になることもあります。


よく見られる場所と観察のコツ

  • 観察時期:7〜10月頃が最も個体数が多く見つけやすい時期。
  • 観察場所:樹皮の割れ目や枝の分岐部、街路樹の幹や庭木などの地面近くに多く見られます。
  • 観察のポイント:遠目には樹皮の一部に見えるが、白く平べったい構造に気づいたら近くでよく観察を。ピンセットなどで軽く触れると、意外な柔らかさに驚くこともあります。

生態系での役割と人との関係

  • アリとの共生:オオワラジカイガラムシの甘露を目的にアリが集まり、保護行動を示すことがあります。この関係は生態系における相利共生の好例といえます。
  • 天敵:テントウムシ類、寄生バチなどが天敵として知られており、自然の中では完全に無敵というわけではありません。
  • 人間への影響:直接人に害を与えることはないが、景観の悪化や植物の健康被害、すす病などの間接的な影響が問題視されることもあります。

似た種との違い

  • ワタフキカイガラムシ類:同じく白いワックスを分泌するが、全体が球形に近い。
  • イボタカイガラムシ:やや似ているが、より小型で突起がある。
  • ナンキンキカイガラムシ:形状が異なり、寄主植物も異なる。

飼育・研究対象として

カイガラムシ類の中でも大型で観察しやすいため、昆虫観察や研究対象としても適しています。ただし動きが少なく、地味な印象を受けやすいため、興味をもってじっくり観察することが重要です。


基本情報

  • 和名:オオワラジカイガラムシ
  • 学名:Drosicha corpulenta
  • 科名:ワラジカイガラムシ科(Monophlebidae)
  • 分布:本州・四国・九州
  • 寄主植物:ケヤキ、エノキ、サクラ、カエデ類など
  • 発生時期:夏〜秋
  • 特徴:体が大型でワラジ状、甘露の分泌、アリとの共生、すす病の原因となる

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