トビモンシャチホコとは？
**トビモンシャチホコ（跳紋鯱鉾蛾）**は、チョウ目シャチホコガ科に属する中型のガで、独特な姿の幼虫と、変わった翅模様をもつ成虫で知られています。「トビモン」は翅の模様が“飛ぶような模様”に見えることから、「シャチホコ」は幼虫が反り返る姿勢をとることに由来します。
幼虫は見かけに反して俊敏で、驚くと跳ねて逃げるというユニークな行動を取ることから、昆虫ファンの間でも人気の高い種です。
特徴
- 体長：成虫で約30～35mm（開張約50〜60mm）
- 体色（成虫）：淡褐色〜灰褐色を基調とし、翅には不規則な白い帯と斑点模様がある
- 体型：翅をたたむとずんぐりとした円錐形になり、樹皮への擬態に優れる
- 幼虫：黒褐色でイボ状の突起が並び、尾部を持ち上げる独特な姿勢をとる
- 成虫の擬態：翅の模様が木の枝や樹皮の質感に似ており、静止時には見つけにくい
生態と行動
- 活動時期：成虫は主に6〜9月にかけて出現（年1化）
- 幼虫の食性：ヤナギ類やポプラ、シラカバなどの広葉樹の葉を食べる
- 成虫の行動：夜行性で、灯火によく飛来する
- 幼虫の特徴的行動：驚くと尾部を使ってバネのように跳ねて逃げる。また、「シャチホコ型」と呼ばれる独特の反り返り姿勢も特徴
- 蛹化：土中または樹皮の裂け目で繭をつくり蛹化する
生息環境
- 主な場所：河川敷、湿地帯、林縁、都市近郊の雑木林など
- 好む植物：ヤナギやドロノキ、ハコヤナギ、クマノミズキなどの柔らかい広葉樹
- 都市部でも見られる：街路樹や河川敷の緑地でも発生することがある
観察のポイント
- 灯火採集での観察：夜の街灯や自宅の灯りに飛来した個体を見つけやすい
- 幼虫は葉の裏に：日中は葉裏や枝の影に潜み、夜間に葉を食べる
- 跳ねる様子を観察：刺激を与えると跳ねる様子が見られ、動きは俊敏
- 脱皮や蛹の殻も発見できる：枝や幹のくぼみを探すと、脱皮殻や繭が残っている場合も
類似種との違い
| 種名 | 違いのポイント | 活動時期 |
|---|---|---|
| シャチホコガ | 翅に明瞭な白帯がない。幼虫は緑色系 | 6〜8月 |
| ヒメシャチホコ | トビモンよりやや小型で模様が滑らか | 6〜9月 |
| ヒロバシャチホコ | 翅がより幅広く、色が濃い褐色 | 7〜10月 |
人との関係と注意点
- 無毒で安全：毒毛や刺激毛はなく、触っても問題はない
- 庭木で見られることも：ヤナギ類やポプラを植えている庭などでは発生することがあるが、被害は少ない
- 観察・撮影に適した種：擬態、跳躍、奇妙な幼虫の姿と、見どころが多く、昆虫観察や教材にも向いている
基本情報
- 和名：トビモンシャチホコ
- 学名：Phalera flavescens
- 分類：チョウ目 シャチホコガ科
- 体長：成虫約30〜35mm（開張約50〜60mm）
- 分布：北海道〜九州
- 活動期：6〜9月
- 生息環境：河川敷、林縁、市街地緑地など
- 食草：ヤナギ類、ドロノキ、シラカバなど
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