
【日本昆虫研究所】クサカゲロウの生態と特徴|繊細な翅を持つ夜のハンター、その驚きの幼虫時代とは?

■ 概要
クサカゲロウは、透明なレースのような翅と細身の体を持つ昆虫で、繊細で美しい外見と、アブラムシを捕食する肉食性の幼虫期で知られています。成虫はおとなしく、人家の明かりにもよく飛来するため、身近な昆虫として観察されることも多い一方で、実は農業の現場でも「益虫」として活躍する頼もしい存在でもあります。
■ 基本情報

- 和名:クサカゲロウ(草蜉蝣)
- 学名:Chrysoperla 属や Mallada 属など複数種(代表例:Chrysoperla nipponensis)
- 分類:アミメカゲロウ目(脈翅目) / クサカゲロウ科(Chrysopidae)
- 体長:成虫 約10〜15mm
- 分布:日本全国(都市部から山地まで)
- 活動時期:4月〜10月(暖地では越冬することも)
- 生息環境:草地、畑、公園、庭木、林縁など植生のある場所
■ 特徴

クサカゲロウの成虫は、淡緑色の細長い体と、大きく透明なレース状の翅を持ちます。翅には細かく入り組んだ脈があり、光に当たると非常に美しく見えます。複眼は金属光沢のある緑や赤に輝き、光を受けてきらきらと反射します。
羽化直後は白っぽい体色をしており、時間の経過とともに緑味が増していきます。動きはおっとりとしていて、手に乗せても飛び立たないことが多く、その優雅な姿から「森の妖精」と呼ばれることもあります。
■ 生態

クサカゲロウの成虫は主に花の蜜やアブラムシの甘露などを舐めて生活していますが、注目すべきはその幼虫期の肉食性です。
幼虫は「アブラムシライオン」とも呼ばれ、アブラムシ、カイガラムシ、ハダニ、小型の幼虫などを鋭い大顎で捕らえ、体液を吸って捕食します。1匹の幼虫が1日に50匹以上のアブラムシを食べることもあり、天敵として農業害虫の防除に利用されることもあります。
幼虫は体にごみやアブラムシの死骸などを背負ってカモフラージュすることも多く、一見すると動くゴミのようにも見えます。
■ 観察ポイント

- 明るい色の壁やカーテンに、夜間、明かりに誘引されて飛来した成虫がとまっていることがあります。
- 昼間は草の葉裏や木陰に静止していることが多く、風の少ない日によく見られます。
- アブラムシが多くついている植物を探すと、その周囲に幼虫が潜んでいることがあります。
- 成虫は非常におとなしいので、虫かごや指に乗せて観察するのにも向いています。
■ 類似種との違い
- ヒメクサカゲロウ:体が小さく、翅の形状や脈の数が異なる。クサカゲロウよりも草地に特化。
- コナカゲロウ類:翅がより白く粉っぽく、体がよりずんぐりしている。クサカゲロウの方がスマートで繊細。
- アミメカゲロウ類(別科):体型は似ているが、翅脈の模様や生息環境、行動が異なる。
■ まとめ

クサカゲロウは、美しいレースの翅を持つ優雅な昆虫でありながら、その幼虫は凄腕のハンターとしてアブラムシを捕食する見た目と生態のギャップが魅力的な昆虫です。家庭の庭先や公園でも観察できる身近な存在でありながら、生態系のバランス維持や農作物の保護にも貢献する益虫としての一面も見逃せません。自然観察において、ぜひ注目したい小さな名脇役です。
タグ(コンマ区切り)
クサカゲロウ,日本昆虫研究所,アミメカゲロウ目,益虫,アブラムシハンター,昆虫観察,自然観察,レースの翅,昆虫図鑑,夜に光に集まる虫,幼虫が肉食の昆虫,庭の虫,アブラムシの天敵,美しい昆虫,昆虫解説
コメント